「An;G;El」フルバージョン完成

トロンボーン奏者 玉木優さん委嘱作品「An;G;El」ですが、9月8日に初演していただくソロ・トロンボーンとエレクトロニクスのための「Game」「Elements」に加え、ソロ・トロンボーンとピアノのための「Anima」が出来上がり完成版となりました。

玉木さんと初めてお会いし、このプロジェクトの最初の打ち合わせをしたのが去年の9月でしたので約一年がかりとなりました。(曲自体は6月に出来上がっていましたが、そこから実際の演奏とてらしあわせブラッシュアップしていました。)

楽曲について「Game」と「Elements」に関しては前記事に掲載し、それ含め追加でフルバージョンについての解説を掲載しますが、その前に。。。

最初に私が考えていた大枠は至って単純な二点です。

(1)ソロ・トロンボーンの魅力が広められること。
(2)こういう曲を作ることで、自分もソロ・トロンボーンの曲を作ってみたいという作曲家が現れてソロ・トロンボーンの曲が増えること。

その上で玉木さんのお人柄からの

・自然をこよなく愛されている←「Elements」の発想は玉木さんがグランドキャニオンかマチュピチュか(どちらだったか失念)に訪れている写真を見て思いつきました。
・クラシック方面の知識(実演時のもろもろについても)に精通されている。←クラシック的手法の動機操作が肝である「Anima」ができそうと思ったのは、ここから。ソロのみならずブラスバンド、オーケストラも所属されていた経験がある。
・ゲーム好き←打ち合わせの時しりました。いわずもがな「Game」はここから。 
・相当無茶しても許してくださるだろう。←す、すみません。演奏やアルバムを聴いて技術的なものや表現力など。予想以上でしたが。
・エレクトロニクスを使用したのは、新しいものを取り入れてみようという気持ちもありましたが、世界各国をまわる玉木さんが一人でも電気と再生装置があれば演奏できるようにしたかったのです。そのためにはクリックとか必要で云々とか考えていたのですが、玉木さんはなんとクリック無しでエレクトロニクスに合わせています(おそるべしソルフェージュ力と記憶力)

そして、最後に私の自己満足
・自分の設定した基準をどれだけ実現できるか。
・後から聴いても、あーあの時の自分ちゃんとやってたなと自分基準でではありますが、そう思えることが一つでも残せること。(前に書いたことと同義かもしれませんが。)

こんな感じのものを、解説という名のもとに書くとかなり小難しげになりますが、あくまでコンセプトと私自身の忘備録ということで、抜きにしてそれぞれに楽しんでいただければ嬉しいです。


「An;G;El」全曲解説

この曲は1.Anima 2.Game 3.Elementsの3曲で構成されています。

1.Anima
「Anima」は、「魂」や「精神」という意味でつけました。
自身の音楽のルーツにクラシック音楽があげられます。
その精神に一度立ち返るという意味をこめて、主題や動機操作による展開、19世紀後半から20世紀前半の和声スタイル、三部形式という主にクラシック音楽からの技法を使いました。編成はソロ・トロンボーンとピアノです。

2.Game
現在、日本の代表的なコンテンツである「ゲーム」を、音楽で表現できないかというアイディアからはじまりました。
前半は1970年代後半に登場した「ブロックくずし」というジャンルを代表とするビデオゲームサウンド、中間部は8bit機ゲームサウンド、後半は32bit機以降の徐々にゲーム機そのものの性能制約にとらわれず様々な表現ができるようになったゲームサウンド、といった、それぞれのイメージにより作られた三つの部分から構成されています。

また、この曲はソロ・トロンボーンとエレクトロニクスという編成で、前半・中間部・後半の三つの部分における二つの楽器のイメージは、前半部は「対決」、中間部は「均衡」、後半は「混沌」、更に「対決」では楽器でありながら、効果(ボールの跳ね返る音など)を楽器の音程で表現する、いわゆるミュージックエフェクトのようなアプローチからはじまり、モチーフが徐々にあらわれ散らばりながら展開し、「均衡」では、ソロ・トロンボーンは旋律を、エレクトロニクスは主に伴奏として機能します。そして、最後の「混沌」でトロンボーンは、サウンドエフェクト(効果)という立場で関わり、エレクトロニクスのオケと拮抗し混沌を極めたのち原点にもどります。

3.Elements
「陰陽五行説」の『万物は「火・水・木・金・土」の五元素から成り、またこれらは互いに影響を与え合い、常に変化しながら循環する』、『(生命の源とも言われる)「水」からはじまり「火」「木」「金」「土」を経てまた「水」に戻る』という主に二つの考え方を柱に、五元素と関わりの深い日本ならではの要素も取り入れながら構成しました。
この曲も「Game」と同様、ソロ・トロンボーンとエレクトロニクスという編成ですが、純粋なトロンボーンの奏法だけではない、という点に「Game」との違いがあります。

この三曲全てを演奏する場合、下記の意味が加わり楽器間の立ち位置や構造が変化するようにしました。

1.ソロ・トロンボーンとピアノの二人の演奏者の組み合わせ(生演奏のみ)で、二つの楽器は「音楽」を演奏する。

2.ソロ・トロンボーンの演奏者と、エレクトロニクスという既に決まった時間軸と演奏表現の組み合わせ(生演奏と録音)で、トロンボーンは「音楽」と「効果」と二つの立ち位置で演奏するが、「音楽」に比重が高く、エレクトロニクスから独立している。

3.ソロ・トロンボーンの演奏者と、エレクトロニクスという既に決まった時間軸と演奏表現の組み合わせ(生演奏と録音)であり、かつ、トロンボーン奏者は純粋な楽器演奏以外のことも行う。トロンボーンは「音楽」と「効果」と二つの立ち位置で演奏するが、「効果」に比重が高く、エレクトロニクスとの融合度が高い。

最後に「An;G;El」というタイトルは、各曲の頭二文字を組み合わせたものであり、トロンボーンという楽器が18世紀頃、ヨーロッパで宗教音楽に使用されていたことから「天使の楽器」と言われることに着想を得ています。

「;(セミコロン)」で区切っているのは、「;」には、隣り合う要素を区切る、または関連性を持たせるという二つの意味をもつことから、それぞれ一曲でも独立した曲として成立する、また、三曲全てを演奏しても意味が生まれることを表しています。


曲の制作は一段落となりましたが、玉木さんはこの曲の今後のアイディアをすでに練られていて、私もこの曲がどんどん進化することをとても楽しみにしています。

そして、完成したらちゃんと書こうと思っていました。玉木さんをご紹介してくださった(詳しくは関連記事にて)ゲームディレクター、プランナー、トロンボーン奏者、指揮者、合唱指揮・指導者、合唱(たぶんまだある)の梶岡さん、ありがとうございました。


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