JASRAC著作権信託契約約款変更(2017年7月13日プレスリリース)

一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の著作権信託契約約款の変更通知が2017年7月13日にプレスリリースされました。http://www.jasrac.or.jp/release/17/170713.html

これまでもJASRACは2014年に「ゲームソフト及びそれにともなうプロモーション使用における留保(使用料徴収を実行せずに保留にできる)」についての約款変更を行ってきています。
ゲームソフト使用留保に至った経緯はこちらのサイトも参考になります。https://www.inside-games.jp/article/2014/09/03/80165.html

ゲームソフト使用の留保については、私自身も関わってきた業界ではあるので注目していた部分ではありましたが、約款変更に至る経緯というものを目の前で見ていたわけではありませんでした。

今回この約款変更の一部、③「著作者の自己使用の範囲の拡大」を取り上げるのには、推測ではありますが少なからずきっかけを目にしていたので記事にしておきたいなと思った次第です。
著作権信託契約約款の変更について、全文はこちらhttp://www.jasrac.or.jp/release/pdf/170713.pdf

この約款変更の話の前に私自身の話をします。
弊社音楽レーベルを立ち上げ完全オリジナルCD一枚目を作った2014年からM3という同人即売会(コミケの音楽版というとわかりやすいでしょうか)、いわゆるお客様と対面して手売りができるイベントに参加しています。
友人たちが多く参加していたので、いつか参加してみたいという気持ちはあったのですが二次創作ではなく完全オリジナルで出したいという気持ちがあったのでなかなか実現せずにいました。コツコツと10年以上完全オリジナルで出している友人の影響もありました。
それと、音楽レーベルを動かしていくからには、メジャーレーベルと同じく音楽著作権処理をしたものを世の中に出したいと強く思っていました。(JASRAC信託者である以上、結果的にそうなってしまうのですが)

そして、すでにその頃私はJASRACと信託契約をしていましたので、曲を作った時点(極端な言い方みたいですが、字にするとこんな感じ)で著作権はJASRACに移転され管理されます。それがJASRACの著作権信託契約というものです。

ということは、いくら自分で作った曲で自分たちで完パケした他のメーカーなどが介入しない完全にコントロールできる音源であっても、自分で使用すると著作権はJASRACに移転しているので、JASRACに利用許諾届けを出し一定の使用料を支払い使用する処理が必要となります。

一見、なんで自分の曲を自分で使うのにお金を払わなければいけないの?という感じですが、この音楽使用料は何ヶ月後かにJASRAC管理手数料1割を引いたものから、音楽出版者+著作権者であればその割合、著作権者のみなら、まるまま分配されて戻って来る仕組みになっています。

ですので、うちのような300〜500枚程度のロット数が少ないプレスであれば前払いであっても少し他の仕事をがんばればなんとか(笑)〜、という感じではありました。

ちなみに、では、定価明示有りで、税抜き価格2000円、収録曲数10曲、JASRAC管理曲数10曲、録音製造数500枚の概算使用料がいくらになるかというと税込(消費税8%)で64.800円です。 JASRACのサイトに録音物の使用料計算シミュレーション(http://www.jasrac.or.jp/info/create/calculation.php)があるので、そちらで計算した金額です。

そして、いつも悩ましいのは、ご存知のようにプレスは500枚作るなら1000枚作った方が、より多くの枚数を作った方が一枚あたりがお得になりますね。
しかし使用料は単純にいっても2倍になります。そしてCDの場合の音楽使用料は先払いです。プレスした分を先に払ってしまいます。(いずれ分配で戻ってくるものだし、一枚売れたから何円なんてやってる事務処理を考えると、ちゃんと契約している上でのことなので先払いは効率的とはいえます)

そうすると、うーん、在庫もっておくより売り切れたらまた増版するかな〜という検討に入ります。
増版するにしても、以前にプレスした時より時間が空いてしまうと再度、スタンパーデータや印刷物を用意しなければいけないわけで、CDを置いておく場所があるのであれば多めに在庫を用意しておきたいものですが悩ましい。

そして、ようやく今回の約款変更の話。

今回の「著作権の自己使用の範囲拡大」では、『複製(オーディオ録音、ビデオグラム録音出版」について複製数1000枚・部まで管理の留保』(使用料徴収の保留、ただしこちらを行う場合は、使用する著作物の関係権利者全員の同意を得た上で、事前にJASRACに届け出が必要)という変更になりました。

つまり、1000枚までのCD、DVDのプレスには、使用料徴収が保留されますよ。ということです。
保留ということは、本来であれば使用料からJASRAC管理手数料も引かれるわけですから、1000枚分はJASRAC管理手数料無しで管理してもらえるという、信託者にはかなりありがたい仕様といえると思います。

自分で曲を作り音源をつくり完パケしたものは特に問題は無いですが、奏者や他の方の権利に関わる部分があるものは同意を得ることが必要です。(当たり前ですけれど)。

「音楽出版者との契約のない作品に限定」とありますが、これは、音楽出版者経由で作品登録をする場合は著作者でなく音楽出版者が使用料を払います。そして、分配時に音楽出版者と著作権者でJASRAC管理手数料を引いた分をわけるわけです。
そうすると著作権者が使用料を払うわけではないので「音楽出版者との契約のない作品に限定」したのかなと推察します。

つまりあくまで、「著作者」自身が、商業以外で自分の創作物を、みなさんに手にとってもらいやすくするための場合を想定していると思います。

信託者でオリジナル作品を発表したいと思っていて、このあたりを悩んでいた方には良い感じなのではないでしょうか?
また、この部分がひっかかっていて悩んでいた無信託の方の信託検討材料にもなりそうですね。(ただ、そういう方々は1000枚以上普通に売っている気もしますが。)

録音複製以外の「演奏会等」「インタラクティブ配信」に関しては、あまり私にとっては馴染みの無い部分ではありますので、どのようなメリット感なのか把握できずらいのですが、特にインタラクティブ配信で「配信期間が3ヶ月」等限定されていたり、あまりリクエスト回数の見込みが無いもののプロモーション等には便利そうですね。

私がM3に何度めかの出展のころ、同じく、JASRAC信託、正会員の方々より、このような手売りイベントを経験してみたいというご相談を受け、委託やご一緒したりしました。

そこでも話題になっていたのがこの自己使用。値段がついているならまだ基準があるが、例えば無料配布のように売り上げがない場合も使用料どうなるか?等々(無料配布でも発生します)、商業ではなく「自分のオリジナルCDを手に取りやすいように世に広める」ためにちゃんと権利処理をするにあたってのハードルが見えてきました。

私自身は無料配布は検討していなかったので、その時点で動きは止まっていたのですが、無料配布を検討していた方々が音楽著作権の勉強会などで現状がこうなっていて困っている等の質問、相談をしているのを見ていました。

また実際にJASRACの方もイベントの視察をしているのを私自身も見ているので、手売りイベントの現状というのを把握し、信託者、会員の声からこの約款変更につながったのではないかと推察します。

私はまだ準会員なので、運営などに参加できる権利はもっていませんが、正会員の方が声をあげることで良い落としどころにおさまった良い例でないかと思っています。

ぜひ正会員の皆様にはよりよい音楽著作権管理の形になりますようにこれからも声を上げていただければ嬉しく思います。

音楽著作権管理に関することは、いろいろ書きたいことたくさんあるんですけれど、もうちょっと練ってから(経緯が長すぎて(笑))と思いつつも、この「著作権の自己仕様の範囲拡大」の約款に関しては2017年8月1日から適用とのことなのでいち早く書いておかねばと思いました。

私の場合は現状、信託または信託の音楽出版者経由での作品登録ということが前提なので、選択肢に無いことではありますが、「そんな使用料なんか払わずにCD作って売って売り上げ-経費を全額もらうのが一番お得なのでは?」という意見があるかもしれませんし、もちろんそういう選択もアリです(毎回バリバリ売れてる人とかはそういう選択の方ややりやすい場合も多々有ると思います)。

しかし私は使用料を払ってもメジャーレーベルと同じ処理をすることを選びました。これに至る経緯については本っ当に長くなるので、またいずれ。(というか、読みたい人いるのかわかりませんけれど、いずれ垂れ流しますw)

(この記事は2017年7月15日の情報に基づくものです)

株式会社DIGITAL SONIC DESIGN

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